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再生

 ロジャー・ゼラズニィの「アンバーの九王子」に夢中になった時期があった。SFヒロイック・ファンタジー。

 父王オベロン亡き後、王位を狙ってさまざまな陰謀が渦巻く真世界・アンバー。主人公コーウィンは最も王位に近いところにいながら、弟王子らの策略でアンバーの影の世界の一つである現世界・アメリカの某病院に監禁され、薬で記憶喪失にされてしまった。

 意識が混濁していたコーウィンが覚醒するところから、物語は始まる。「終わりが始まろうとしていた。僕にとって永遠とも思える時間が過ぎ去った今になって」。うろ覚えだけど、確かそんな思わせぶりな一文から始まるゼラズニィのこの作品に、たちまちシビれた。

 自分がどこの誰なのかわからないまま、次々と襲いかかる「敵」(実は兄弟姉妹が放つ刺客たち)に立ち向かい、倒していくコーウィン。徐々に記憶が蘇り、ようやく故郷アンバーへたどり着き、ほぼすべてを思い出したのもつかの間、弟王子の手中に落ち、王宮の地下牢へ投獄。再び監禁されてしまう。今度は両目をえぐられ、失明させられて。そして宮中では、弟王子の戴冠式が行われる…。

 どのくらい時間が経ったのか。絶望にあっても、コーウィンは「その時」を待っていた。そう。自分の「力」が蘇るときを。彼をはじめ、王族にはなにがしかの再生能力が備わっていた。空洞だった彼の眼窩には再び目が再生し、光を取り戻す。そして、おのれの力で脱獄し、復讐を誓い、アンバーに呪いをかける……。

 この世で絶対、信じてはいけないもの。それは「きょうだい」と言い切り、登場人物すべてがうさんくさく(王女たちまでも)、スピード感あふれ、とにかくかっこいいのだ。大学で中世イギリス文学を専攻したゼラズニィが満を持して、オベロン伝説をモチーフに繰り広げるサーガ。

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ふうん、それで?(ちいちゃん)


 プチポンもりおかで保護して里親募集しているキジ白のちいちゃん(♀ 不妊手術済み)。去年の夏、大通の繁華街の某店の敷地で子猫を3匹出産、竹薮で子育てしていたところを保護。
 子猫たちは無事それぞれもらわれていき、ちいちゃんだけが残った。とても人なつこく、まだまだ若い。子育ても済み、ほっとしたのもつかの間、ちいちゃんはどんどん体調を崩し、11月には眼球炎を患い、右目が破裂してしまった。
 もともと、保護したときから涙目で(左目は切開跡のような医療行為があったことから、ちいちゃんは元飼い猫だったのだと思う)、目の調子は悪かった。

 けれど、一度、悪いものを出してしまってからのちいちゃんの回復力は見事だった。
 右目が破裂ということは、つまり視力を失ってしまったものと思っていたのだけれど。画像(4月1日撮影)を見てわかるとおり、うっすら膜のようなものが全体にかかっているけど、瞳孔は大きくなったり小さくなったり。ということは、見えているのだ。

 みんなで、「ちいちゃんの目、よくなってきているような気がする」「すごいよね」と言っていたけど、ここまで回復するとは。体型は…ぼんぼり尻尾の後ろ姿はまるで、うさぎそのもののようにころんとなっちゃったけど。おなかの毛の再生も、そのうち、ね。

 失われたものがどこまで再生するものなのか。再生能力がある「種」はどういう種なのかはよく知らないけれど。そういえば、清水玲子の「パピヨン」も、プラナリアを使った「再生」の話だった。

 ころころと肥えて、こちらにしがみついて「にゃむにゃむ」と甘えてくるちいちゃんを抱っこしながら、ふと、一条の光すら届かない牢獄の闇で、復讐を誓うコーウィンを久々に思い出した。岩窟王もどんな思いだったか。「銀色の髪のアリサ」(by和田慎二)のアリサは…なんて、目の再生から思いがけず、囚われのフィクションの主人公たちのことをつらつらと思い浮かべた、4月最初の日曜日。

 ある化粧水をつけてダメージを受けた皮膚はなかなか回復しない。なんとかよくなったかと思ったら、再びひどくなった。自分の再生力って…とちと情けない。

 心は? 落ち込んだりダメージを受けたり、自分に嫌気がさしたとしても、再生する力は必ずあると信じている。うん、大丈夫だ。こういうときは、荒波に向かって「人間って案外強いものですのね」とつぶやく「エースを狙え!」のお蝶夫人を思い出したりして。しょーもないなあ。

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 ゼラズニィ作品では、ほかにインド神話をモチーフにした「光の王」(深町眞理子さんの翻訳がすばらしい)、ギリシャ神話をモチーフにした「わが名はコンラッド」、そして「伝道の書に捧げる薔薇」がおすすめです。

 ゼラズニィを教えてくれたSちゃんには感謝。一緒に行ったギリシャ、懐かしいね。

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 ちいちゃんの募集記事はこちら。里親募集中です。
by amemiyataki | 2007-04-01 23:54 | 日常
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