<< スーリーとカヌレ 餌やり覚え書き >>

はんこの話

a0099350_10593344.jpg

すなめり遊印さんに作っていただいた、大切なはんこたち


 40を過ぎるまで、認印、銀行印、印鑑登録…はんこはすべて1本で通してきた。それは中学卒業時に学校から記念品として贈られたものだった。男子は青、女子は赤の認印。社会に出て働いて、思えば人生のかなりの時間、必要なときにそのはんこは活躍してくれた。
 それが03年だったか04年、見る見るうちにはんこの丸枠が欠けだした。最初は気にしていなかったが、それだと書類が通らないかも…といくつかの機関でいわれ、これは新調しなくてはいけないかなあと、ふと仕事でお世話になり、思い当たる人がいたので、仙台へ行った。その人は占術を生業にしている人だった。
 曰く、はんこの印影にはいくつもの運気が詰まっている。外枠の丸い枠には仕事運、蓄財運、住居運…すべての方向にそれぞれ運がついている(かなり後でわかったことだが、欠けた部分は愛情運と交友運の部分だった。当時は確かに対人関係で行き詰まり、おまけに大殺界の頃でもあった)。
 そして、「うんと運のいいはんこを作ってあげるわね」と、認印と銀行印を作っていただいた(実印は『あなたにはまだ早い』と言われた)。

 出来上がったはんこは、たしかに丸枠のあちこちに文字がくっつき、しかも太い書体で、言われてみれば運がいいかも…なはんこだったが、いかんせん、文字面が読みにくい。なんて書かれてあるのか(読みにくいのがいいのか?)。ただでさえ画数が多い苗字。そして(ここが肝心なのだが)、使っていても印面がくっきりつかず、何か釈然としない。「立派ですね」と相手に言われても、それがほめ言葉には聞こえなかった。「わかりにくいですよね…」と恐縮しきりだった。

 最近わかったことだが、銀行印は右から横に読めるようなはんこがいいらしい。「お金が縦に流れないように(たまりますように)」。女性は下の名前を横書きに。
 占術を生業とするその人が、はんこ職人に作ってもらった銀行印は、名前の縦書きだった…。
 そうなると、いよいよ作ってもらったはんこに愛着が持てなくなってくる。
 そういえば、その人は私の名前も改名したほうがいいわよと言い、あれこれ画数を見て奮闘してくれたが「どれもよくない…」と、結局、そのときは私のほうから遠慮して断った。

 こうして新調した認印と銀行印はそれなりに使ってはいるが、今年になってから違うはんこがあってもいいかな…と思うようになった。どうせなら、実印もそろえた三本セットはどうだろうか。パワーストーンで印鑑を作ってくれるところは…? など、ネットであれこれ検索してはみたものの、どうもピンとこない。しかも、高い。
 パワーストーンのアクセサリーを作ってもらっている石屋さんに相談したところ、印鑑はそれほど縁起をかつぐこともない、と言われてはたと迷いから覚めた。その人が言うには、「100均ショップで手に入れたものでも、要は自分が気に入るかどうか。好きになれるかどうかじゃないかしら」。で、思い出したように「そういえば、私も通販で印鑑を注文しようと思ってたのよ~。あのカタログ、どこに行ったかしら」とあっけらかんと言う。

 そして偶然、不思議なはんこ屋山本印店店主が出した本を読む機会を得た(ジュンク堂で立ち読み…)。それを読むと、印鑑の素材は水牛などの動物系よりも自分は木(柘植)の植物系をいいと感じる。印鑑はできれば三本セットでそろえたほうがいい。うちで印鑑を作りたいという人には、それまで使っていた印鑑すべてをもってきてもらい、拝見する。それが「いいはんこ」と感じれば(何か見えたり感じたりするらしい)、作るのをお断りする。読んでいて、そうか、無理することはないんだなあと思い至った。
 このはんこ屋さんが彫る文字の書体が独特で、見ているだけでなんだか楽しくなってきそうなものだった。たとえ、運がたくさんついているという丸枠に文字が届いていなくても。

 もともと、木は好きだ。そして、どうせなら自分が「好き」と感じるはんこを作ろう。となると、これまで本当にたくさんお世話になってきた「すなめり遊印」さんのことが頭に浮かんだ。
 遊印とあるからには、こうした印鑑は作ってもらえないのではないか。恐る恐る、打診のメールを出す。返信はこちらの杞憂にすぎなかったと思える、気持ちのいいものだった。注文のかなりのパーセンテージは、実は実印や認印、銀行印などが占めていること(それで、HPでは印面を紹介していないものがけっこうあったのかと納得)。ただ、遊び心あふれるはんこが好みでない人には向かないでしょう、とのこと。
 迷いはまったくなくなった。本体は猫のモチーフで。三本のはんこが入る印鑑ケースも合わせて注文。思いきり、こちらの好みを伝えた。

 「今世で力を存分に発揮していただきたく、多紀さんの背中を力強くおせるような素敵なハンコセットを作ってさしあげたいなぁと思いましたよ♪」

 頼んで本当によかった。すてきな言葉を今回もいただいた。出来上がりは1年後。楽しみに待ちつつ、それに見合うようもっとましな人間に成長できるよう。

 いい加減、部屋の片づけをしなくては…。


 
by amemiyataki | 2008-08-19 13:29 | 読み物
<< スーリーとカヌレ 餌やり覚え書き >>