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日常という幸福

この地球上で、幸福の量と不幸の量は、いったいどちらが多いのだろう。東京で開かれている世界報道写真展を見ると、「世界は不幸に満ちている」という思いに胸が痛む…

6月23日(月)付 朝日新聞 天声人語より


 6月はなんとなく、気持ちが塞ぐ月になっている。
 マッチョンを喪ったEさんが、周りから「また(猫を)飼うの?」と聞かれ、「どう答えてよいかわからない自分が居ました」と、メールに書いていた。

 地震前からちーの様子がちょっとおかしく、地震後はひっそりとじっと、猫ベッドにこもり、いくぶん調子は戻ってきたものの、先週は玄関に置いていた布バッグに粗相(置きっぱなしの私が悪い)。
 体調が悪かったとしたら、便秘ぐらいしか症状がなく(これは治った)。どちらかというと精神面での不調が大きいように思う。唯一の楽しみの「遊び」を「最近、アメミヤのやつ(私のこと)サボってるにゃ。おしおきでつ」と、抗議してのことだったかもしれない。かといって、大好きなスーパーボール遊びをする気にはなれないほど、ちーにとって地震を起こす「自然」は怖かったに違いない。

※6月24日深夜、実に久しぶりに(1ヵ月ぶり以上?)スーパーボールを廊下でゴロゴロ転がしていたと、母。

 もし、ちーやたきを喪ったとして。「再び猫を飼うの?」と聞かれたら、たぶん私は「はい」と答え、そうするだろう。母の猛反対をどうかわすかが問題だけど。だからといって、新しく迎えた猫が、代わりとなるわけはなく、喪ったことでぽっかりとあいた心の穴は、おそらく自分が生を終えるまで、抱えていくことになるのだろうけど。

 「猫を喪った悲しみは、猫を飼うことでしか癒されない」と、以前読んだ漫画にあった。たぶん、そうなのかもしれない。けれど、いつどうやって再び猫との暮らしに入るか。それは誰にもわからないし、他人に言われて決めることでもない。


 去年の今ごろ、心臓カテーテル検査でさんざん悩んでいたのが嘘のように、母は再びの同窓会を控え、張り切っている。もう買わないと言っていたのが、ちゃっかりと、新しい服を買い込んで、後でデカい買い物をしてしまったとビビっている。元気だからそれがいちばん。
 もしあのまま、医者に言われるままに検査を受けて、ペースメーカーを入れることになっていたとしたら? いやいや。今思うと、かかりつけ医は強引だったけれど、専門の循環器医師は母に手術はまだ早いと思っていたように見える。ただ、インフォームドコンセントの手順にのっとって、最悪の可能性まで説明しただけにすぎない。どちらの医者にしても、後で何があっても知らないよ~ボク、説明したもんねと、自分たちの責任逃れのために、面倒な言葉を述べ連ねただけのような気がしてならない。

 昨日、NHKの「プロフェッショナル」に、ホスピスに勤めるがん患者専門看護師が出ていた。患者に寄り添い、がんばりましょうと励ますのではなく、ただただ話を聞き、うなずき、笑い、患者自身に自身が納得のいく答えを導き出せるようサポートする。目線を、横たわる患者と同じ位置になるようしゃがみこみ。

 当たり前のことなのだろうけど、この「当たり前」が医療現場ではなかなかできないのではないか。

心を残さず、生ききる。
どんな状況でも、希望は必ずある。


 父のときに、こういう看護師がいたら。ホスピスはなく、そもそも「告知」すらしない状況で、具合が悪くなれば2人部屋に。少しよくなれば8人部屋に。食べられないならもったいないからと、食事を打ち切られ。小走りに廊下を行ったり来たりの看護師たちに、ていねいに、患者に寄り添うようにという当たり前のことを望むのは無理だったろうとも思う。

 後悔というより、父にはいまだ申し訳なかったという思いが先に立つ。今は7~8割の患者の痛みを、医療用麻薬で緩和することができますと、その看護師は言ったけれど。なんにしても、厳しい病だと、番組で紹介された患者さんたちのケースを見て粛々とした気持ちになる。


*****

 バイト先が慌しい。辞めた人。一週間、突然休む人。産休に入る人。半年、休職扱いとなる人はそれが叶わず、体調不良にもかかわらず出勤している。乳がん治療。10日ほど休んだ後に出てきたとき、その人はウィッグをつけていた。離婚して子どもが3人いて。働き手として、休むわけにはいかないだろう。厳しい現実。
 人手不足のなか、売り上げも厳しく、疲労だけが蓄積される。


 いろいろあるけれど、世界にどれだけの幸福と不幸の量があるかは知らないけれど。

 この日常は悲しいことばかりではない。もうダメだと思い、何もしたくないほどふさぎこみ、涙を流し、とりあえず寝よう、とそうしても。おかしなことに、腹はすき、そうした自分に滑稽さを感じ。ふと笑い。打算のない猫の様子に心がほどけ。そうだ、希望は必ずあるのだと。世界は美しいと。そう思いながら、日常を過ごしていきたい。



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by amemiyataki | 2008-06-23 11:42 | 日常
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