まりおのことを書き記さなくてはと思いつつ、何からどう書いていいのか、この数日、ずっと考えていました。まりおは、まりおと出会った人たちすべてに、鮮やかな存在感を放ち、幸せな気持ちを抱かせてくれ、短い生を終えました。
わき腹に怪我をした野良猫のまりおが、プチポン友のサヴァさんの前に姿を現したのが5月18日。「傷は難しいものではないとのことですが、ほっておけば穴が開いたままでまた化膿しかねない。ただこのまま縫うだけでは中に膿が溜まるので、ドレナージという管を傷に入れて先を出しておき、毎日薬を入れて膿を洗い流すそう。4~5日で治るでしょうとのこと」(以下、「 」内はサヴァさんのメールから) 19日に傷の手術。思ったより経過は良く、毎日の消毒はしなくてもいいということで、プチポン入り。ウイルス検査(エイズ、白血病)、寄生虫ともに陰性。 頭にかつらをかぶったような白黒猫。ダミ声。攻撃性もまったくなく、見るからにおっとりした、まりおは本当に不思議な猫でした。プチポンの保護猫たちにもすんなりと受け入れてもらい、泰然自若そのままに、野良から保護猫へとなり、去勢手術も済ませ、幸運にもお問い合わせもすぐにいただき、お見合いの後、譲渡が完了したのは6月18日のことでした。 短い保護期間中、「まりおの左足がおかしい、引きずっている」と空蝉さんが気づき診察。レントゲンも撮りましたが特に異常なし。おそらく、わき腹の怪我以前に怪我をしていたもので、すでに古傷として治りかけのものではないか、ということでした。 結果として、このふさがってしまった古傷が原因で、まりおは7月6日からほぼ1ヵ月間入院、文字どおり生死をさまようことになりました。 プチポンにいるときも、もらわれてからも、まりおは絶好調。よく食べ、よく遊び。体の中に抱える不調はまったく表に現れず、それがいきなり現れたときは里親のTさんも私たちも本当にびっくりしました。 高熱と黄疸によりまりおが緊急入院したのが7月6日。原因不明。 「体温41度、黄疸がひどく出ていて呼吸が速い。レントゲンで胸水腹水はなし。考えられることは、怪我したところから入った菌が残っていて繁殖したか。またはFIPの可能性もあり検査の結果まち(一週間ぐらいかかる)。一般的検査は明日わかる。感染症であれば抗生剤と点滴で良くなってくると期待。黄疸が出るのは猫の場合厳しいが、良くなる症例もある。抗生剤で熱が下がらないとなるとウイルスが疑われるのでインターフェロン、またはステロイドを使うことも、とのことでした」-7月6日 「40.4度(大して下がっていない)。黄疸は相変わらず。一般的血液検査の結果も良くない。白血球が少ない。ということは細菌による感染症ではないということ。それにすでに抗生物質をやっていて細菌感染ならスーッと熱が下がって来るはずなのに下がってこない。黄疸なのに肝臓の数値は悪くない。ということは劇症肝炎などでもないということ。やはり色々考えて、FIPの疑いが濃厚ということでした。先生はすでにインターフェロン投与も始めていて、ホメオパシー治療も、あれこれ考えられることを試して熱を下げ黄疸を抑えるよう努力してくれています」-7月9日 FIPなら状況は極めて厳しい…いっこうに下がらない高熱。最悪の事態を覚悟しなければならないのか…重苦しい一週間が過ぎました。 7月13日深夜、先生から連絡がありました。「まりおくん 左膝のとこ膿ようになっていました。さっき見つけてすぐ麻酔かけて切開排膿しました。明日改めて手術します。何で今頃膿ようになるのか…でも発熱黄疸の原因は多分これです。多分これで治ります。生きて帰れますっ」 原因がわかり、切開手術をしてからの回復は早かった。「左大腿から下腿にかけてかなり深いポケットが出来てました そこに膿たまってたんじゃ そら黄疸にもなるわという感じ 腹壁をやぶってお腹まで達しそうな雰囲気でしたが 幸いそこまでは行っていないよう」と先生から。 これですべてはいい方向に。と思ったのですが、まだそれだけでは終わりませんでした。7月16日から、再び40度台の高熱。 炎症を起こしている細菌に効く抗生剤を探すため、細菌検査して結果待ち。黄疸がひいてからやめていた点滴を再開。「足からの膿は全くないのに40度をまた下らなくなりました 抗生剤はちょこちょこ変えてみましたが変化ありません。ので、腹腔まで細菌が達している可能性を考え 先程再び鎮静をかけ 腹腔内洗浄のためのドレインを入れました」 結局、細菌の種類が2種類あり、それぞれに効く抗生剤が異なり、抗生剤を直接血管に入れる静脈注射などをして…今度は貧血。「FIPについては完全にシロではなく「微妙」なんだそう。数値(抗体価)が100だったそうなので…「FIPは、数字からは今一つわからない」とのこと」 7月28日「先週末貧血がひどくなりました。赤血球の数値が20を切ると貧血だそうですが、それが10になってしまい、輸血も考えねばならないかもといわれたそう。でも輸血には弊害もありなるべくしたくない、しかも点滴続きで輸血できる血管がもうない、と。でもどうやらまりおは輸血しなくて済みそう。そして貧血には、もう赤血球を作ることができなくなるタイプのものもあるそうですが、まりおはその機能はちゃんとあるらしいです。体温も平熱で安定してるようですし、今後の回復に期待したいです」 7月31日「今日も多めにあげたご飯をぺろりと平らげたそう。平熱。赤血球も低めながら正常域に(10だったのが26に。20がボーダーライン)。白血球は一時5万!もあったのが7千に。 まだ痩せてやつれた様子だけれど耳や鼻などピンクがかってきました。結局表面上は治った脚の傷の細菌が体内に残って敗血症を引き起こしたということらしいです。細菌が二種類で、抗生剤は血管に入れないと効かなかったし、またそのせいで貧血になったことも考えられる。今はレメディの治療に切り替えているとのこと。今週末抜糸、来週はじめ退院。退院後もしばらくは定期的にみせて下さいとのことでした」 そして、もう大丈夫でしょうと退院したのが8月4日。Tさん夫妻のもとへ戻ってからのまりおの回復ぶりは頼もしく、みんなが本当に良かった、よく頑張ったねえと安堵していたのでしたが。 8月15日夜、まりお緊急手術。「腸閉塞の状態になり、緊急手術の最中に亡くなりました」 みんなが呆然。言葉がありませんでした。Tさんの悲しみはもとより、何度もお見舞いに行き、心を痛めていた保護主のサヴァさんの心痛を思い……。 サヴァさんが野良時代のまりおについて周囲に聞いて回ったところ、怪我をしたのはサヴァさんが見つけるまでにはずいぶん前のことで、ほぼ1ヵ月近く、まりおを知る複数の人たち(餌やりをしている人も含め)は知りつつも何もしなかったらしいです。人馴れしていないわけでもないまりおを、この人たちは病院へ連れていくこともせず、餌をばらまき、写真を撮り。それでかわいがっていたというのか。 譲渡し、里親になっていただいたTさんご夫妻に、結果として悲しみだけを運んでしまったのではないか……。 葬儀を終えたTさんと電話でいろいろお話ししたサヴァさんが言うには、「まりおがいた、入院前後合わせて1ヶ月足らずの間に、とても深い絆ができていたことが感じられました。Tさんご夫妻、そしてミントちゃんはまりおに大きな影響を受けたそうです。それがちゃんと各自の中によい形で残っていると。一日経って落ち着いてみると楽しかった思い出ばかりが浮かんできて、本当にまりおに出会えてよかった、まりおを託して下さってありがとうと言ってくれました」 まりおは幸福をつかみきれなかったのか。いや、そんなことはない。「つくせるだけの手をつくしての結果は、やはり天命だったとしか言いようがありません」とサヴァさんが言うように、これがまりおの天命だったのか。 少なくとも、あのままサヴァさんに出会わず、野良としていたら、とうにまりおの命は尽きていた。短い間だったけれど、プチポンのルームメイト猫たちとたくさん遊び、プチポンメンバーたちにかわいがられ、Tさんのご家庭のもとで家猫としてそれはそれは楽しく過ごしたまりお。 もしかして、自分の天命をちゃんと知っていたような気もします。治療の苦難を受け入れ、乗り越え、さあこれから、というときに天に召されたまりお。 ネットを通して、まりおファンもしっかり獲得しました。応援してくださり、行く末を見守ってくださった方々に、心より御礼申し上げます。短いながらも、まりおはがんばり、幸せを味わいました。 ありがとうございます。 パソコン修理中に加えて帰省中のサヴァさんに代わって、心より感謝をこめて。
by amemiyataki
| 2008-08-18 13:08
| 日常
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