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続・病めるときも…モリの場合

 山中にきょうだいたちと捨てられた、モリ。ふたりのきょうだいは(おそらく野生動物に襲われ)相次いで命を落とし、いちばんでかくて元気だったモリが九死に一生を得て、からくも保護された。それが今年8月中旬のこと。絶命したきょうだいを気遣うように寄り添っていたという(保護は目撃から翌日のこと。そのとき一匹の姿すでになく、おそらく野生動物にさらわれたのではないかとのこと)。捨てられてどのくらい経っていたのか、何を食べてかろうじて命をつないでいたのか。ひょろんと体長は長いのに、爬虫類のように細っこかった。保護時の体重は1.7キロ。よほど恐ろしい思いをしたのだろう。人間に捨てられたにもかかわらず、空蝉さんにすがりつき頭を押しつけて全身で「助かった!」安堵と喜びと飢えを表したという。排泄物はうんちというより、無数の昆虫類の集まりだったそうだ。

 これでもう安心。モリも、プチポンみんなもそう思ったはずだった。がほどなく、比較的新入りだったのりおが風邪をひき、のりおが子分のようにかわいがっていたモリも風邪をひいた。大きく体力もある若いのりおはほどなく回復したが、モリは違った。なかなか治らない。高熱が続き、はかばかしくない。食も相変わらず細い。子猫なら成長著しく体重も着々と増えるはずなのに、何かが邪魔をするようにうまくいかない。10月初旬、血液検査(一般)を行った(エイズ白血病のウイルス検査は保護時にしており、どちらも陰性だった)。肝臓の数値(GOT、GPT)と総たんぱくの値が正常値を上回っていた。FIP抗体価検査はしなかった。この時点で腹水、胸水はたまっておらず、抗体価検査をしてもFIP(猫伝染性腹膜炎)に感染しているかどうかの見極めは難しく、あまり意味がないのではないか。たとえば抗体価が6400という数字だったとしても、それはコロナウイルスに感染している数を示すもので、そのうち、どれだけがFIPを引き起こす突然変異ウイルスになっているかまではわからない。数値が高くても突然変異ウイルスがなければFIP感染ではない。逆に抗体価200と数値の低さに安堵したところで、それらすべてが突然変異ウイルスなら…検査しても考えても仕方のないことなら、とにかくできることをし、先生にはできることをしてもらうのみだ。そう思った。ふと、いちばん最初に先生の病院に預かり入院させてもらった、今は亡き黒猫のダイナのことを思い出す。ダイナはFIPドライタイプだった。

 保護されて元気だったのはわずか2、3週間。痩せた体でなんらかのウイルスと闘っているモリがいじらしく、不憫だった。

 どうにか高熱はひき、後は食欲が戻れば…とみんなが願っていた矢先。11月初旬、モリは突然神経麻痺になった。
 その日の朝、いつものようにレメディをのませて通院しようとモリを抱っこし、床に下ろしたところ。くったりと力なく横に倒れた。いやな予感。案の定、先生は「これが神経麻痺です。まずいです」。(前にも神経麻痺を疑うようなときがあったが、それは早とちりだった)このときはお灸と鍼治療で復活した。力がまるでなかった体がよみがえった。病院に向かう前、みんなに「ダメかも…」とメールをしたが、帰る際は「なんか…復活した」とメール。けれど、翌日の通院では…復活しなかった。モリの小さな体はまっすぐに座ることなく、くったりと横倒れになったまま。先生も「無理に(こちら側の世界に)引き止めるのは…」とつぶやき、うなずきながらもただただ悲しかった。「モリの新たな旅立ちを見守りたいと思います」そうみんなにメールした。このとき体温36.1度。一時は2.15キロまでいった体重も1.5キロまで落ち込んだ。「ひとりで死なせたくない」と、空蝉さんが家に連れて帰った。二枚歯だった乳歯が、完全に永久歯に生え変わったばかりのことだった。

 それでも通院は続いた。先生はああ言いながらも、お灸(テルミー灸、千年灸)と鍼をし、静脈注射(栄養剤)と皮下注射(補液)をし、ささみの強制給餌を続けた。そしてレメディを処方。それでも突っ張って冷たくなったままの手足にぬくもりは戻らず…つい「死ぬ準備をしている動物を無理に起こすようなことはしないほうが(いいのでは)…」と、失礼なことを言ってしまった。先生は「死ぬ準備をしている動物なら、何をしても反応しませんよ」と返した。私の目にはなんの変化も見えなかった。けれど。大粒のささみをカンシでぎゅうぎゅうと喉奥に突っ込まれ、涙ぐみながらも、それを口にすると確かにどんよりしていたモリの眼差しに力が宿るのが見えた。そこまでしなくても…と正直思わないでもなかったが、麻痺した体で抵抗するすべもなく、吐き出そうとするのかと思いきや、うっくと音を出しながらも大きなかたまりを飲み下すモリ。弱っている体に通院は負担に思えて仕方なかった。通院は一日おきでもいいでしょうか…と切り出す私に、先生は「いまが肝心なときですから」。ただでさえ体はしんどいのだから、せめて口から水分をとらせてあげてください。そうも言った。

 黙々と治療を続ける先生と、それを受け入れるモリ。先生の献身とモリの姿に、絶望一色だった心に変化を得た。できることは、まだあるのだ。今は自分にできることをするのみ。

 満月の夜、モリを月光浴させ祈ったが、そう、できることはほかにもある。テルミー灸を習っていてよかったと、つくづく思った。そして、食事。

 ささみばかりでは飽きるだろうと、牛肉を試してみた。てづくり猫ごはんはとても参考になった。さらに、以前、仙台の親戚の家にいたミミちゃんのときに相談したホメオパスから教えてもらった電解質液のことなど。過去ログをたどり、いろいろと思い出す。卵の黄身(ブロイラーはNG)も栄養価が高く、優秀な食材だ。病院から流動食ももらった。カロリーエースもいいが、病院処方食のほうが衰弱した猫には効くようだった。それらを味見し、レシピの電解質液では少ししょっぱいような気がして、調整。はちみつはマヌカハニー(UMF+25)を使い、塩はヒマラヤ岩塩を使ってみる。この猫版ポカリスウェットともいえる電解質液は市販のものもあるが、自分で調整したもののほうがいいような気がした。生理食塩水。塩と甘味(はちみつ)と純水(ピュアウォーター)。それだけで作ったもの。成猫の場合、1日の水分摂取量の目安はだいたい200cc(体重4キロあたり)。モリの場合は1日100ccはほしい。先生にアドバイスを受けた。いくら注射で補液したところで、口からとる水分、栄養分はそれに優る。ミルクよりも電解質液のほうが吸収率がいい。過去ログを読み返して思った。過去の自分が現在の自分を支え、未来の自分にエールを送る。経験が人を強くする。モリにできることはまだあるのだ。それが嬉しかった。

 「てづくり猫ごはん」を読み、野菜スープも作った。ヨーグルトスープはモリ的にはNGだった。それより、ヨーグルトを指にとり、それをそのままなめたほうがモリ的にはおいしいようだった。電解質液をシリンジで10cc。それを頻回。ささみはリンが強いので泌尿器系トラブルをかかえる猫や老猫には控えたほうがいい(腎臓に負担)。同じ鶏肉をあげるなら、胸肉、もも肉のほうを。牛肉は胃腸を強化する。にんにくは感染症治療の猫におおいに有効。少量でOK。それから、キノコ系もいいかもしれない。

 しかし、てづくり食を強制給餌するのは難しい。それらを押さえつつ、肉のかたまりメインでモリにあげた。牛の赤みのブロックを売っている店がなかなか見つからなかった(ミンチする前のかたまりが欲しいとお店の人に言ったら、「何に使うんですか?」と聞かれた。「猫のごはんに」とは、ちょっと言えなかった…)。少し迷ったけれど、奮発して前沢牛のももスライスを100g買った。適量分に熱湯を注ぎ霜降り状態にし、自然卵の黄身をまぶし、タウリンと牛の初乳(コロストラム)、紫蘇油(オメガ3)を加え、スプーンでまぜた。カンシはないのでピンセットで強制給餌したが、それだと口内をひっかいてしまい、怖くなり、魚の骨をとるときに使うとげ抜きで代用。しかしそれだと充分な長さはなく喉奥まで届かず、そしゃくするうちに前に戻り、吐き出してしまう。結局、口のわきからスライスをまるめて滑り込ませると、シャクシャクと噛み、うまく飲み込めるようだった。モリはもともとドライ(カリカリ)が好きだが、やはりこういうときは食材の持つエネルギーが体に行き渡るようで、生食、手づくり食ってやっぱりすごいなあと思った。キャベツ、にんじん、にんにく、まいたけで野菜スープを作り、それもシリンジであげた。その頃、「もりもり食べて大きくなりますように」という願いをこめて、「モリ」と名づけたと、空蝉さんから聞いた。

 ひんやりと冷たく突っ張ったままの前足には、なかなかぬくもりが戻らない。それでも、先生は「よくなってきてるじゃないですか」。正直どこが?と思ったが、先生がそういうなら、そうなのだろう。「もうダメかも」と、病院に駆け込んだのはこれが初めてではない。たみおのときもそうだった。たみおのときは、先生も死の気配を見たようだったが、モリのときは違った。先生には「ダメ」ではなかった。モリは生きようとしている。生きたい気持ちを感じ取ってくれたのか。

 今思うと、神経麻痺にはまさに鍼灸治療が必要なのだということがわかる。効果に半信半疑だったが、体の冷えは人も動物も大敵なのだ。冷たかった前足にぬくもりが戻り、温かくなり、猫特有のしなやかさに曲がるようになり。これは本当に嬉しかった。もしかして脳にウイルスがまわっているのだとしたら、脳活性ペンダント「イフ」も良かったかもしれないが、ミミちゃんにあげてしまっていた。代わりに、モリのケージにはずっとアメジストのクラスターを置いた。テルミー灸はツボを気にすることなく、気軽に使える。力が入らないモリの体を温める。シリンジで水分補給をする。レメディをのませる。食事をとらせる。通院する。そうしたことが続き…横たわったままだったモリの体が、なんとか自分の力で座り、香箱座りが組めるようにまで回復。体温も上がってきた。よし、いけるかも…というときに、今度は触診で「おなかにおかしな固まりが…」。どきりとする。右の腎臓が左の腎臓より大きいような…しかし、今はそれらの検査をどうこうするというのは考えられず、とにかくできることを。モリは小さな体でがんばっているのだ。

 そして今、1.5キロまで落ち込んだモリの体重は1.65キロまでに回復。体温も38度台をキープ。誰もがダメだと思っていたのに。腎臓も、しこりというよりはどうやら炎症を起こしていて、それも引いてきている。

 光明が見え、希望を感じはじめたころ、結局、(モリの病気は)なんだったんでしょうね」と先生に聞いた。FIPドライタイプを心配していたときも、「(FIPにしては)症状が緩やか」と先生は言った(それでも、高熱が続いたときはFIPのレメディ(ノゾース)をとらせていた)。「うーん…なんらかのウイルス感染症による神経麻痺、ですかねえ。ウイルスもさまざまあるから」。一時は、鉛中毒に効くレメディも処方された。泡を吹くなりしてよほどの拒絶がないかぎり、強制給餌も水分補給も「必要なこと」。そして、体を温めることの必要性。

 先生とモリにはたくさんのことを教えてもらった。

 すっかり筋肉が落ちてまだ歩けないモリ。まるで生まれたての子馬のようによろよろ這いつくばるのだけれど。数日前から気持ちよさそうにまるまって眠るようになり。昨日は自力でトイレまで行き、うんちをした。いいうんちだった(以前は排泄も悪く硬いうんち。栄養吸収も排泄もうまくいっていない、アンバランスな体調だった)。
 手が動くようになってからは強制給餌も難しくなり、シリンジを何度もはたき落とされ(それでも水分補給は必要なのだ)、とうとうたみおのときに入手した拘禁服?(洗濯ネットのようなもの)を着せての強制給餌。
 昨夜は自分で水を飲んだという。これはすごい。もともとドライ派なので、もつもつと自分でカリカリも食べるようになった。「モリは昨日より元気。目がはっきりしてきた。ケージを開けていたら、転びながらだけど出てきて膝に来ました。リハビリのため手は貸さなかったけれど、頭をすりつけたりフミフミしてました。今は長くなってヒーターの前にいます」と空蝉さんからメール。

 歩けるようになるためのリハビリ訓練の方法も教えてもらった。指を1本ずつ横からつまみ、ギュッギュッと「押して引く」。足の裏に重力を感じさせるように脚を伸ばしたり、押したり。こんなふうにと、先生がギュッギュッと押してみせる。私の指にも同じようにして、強さを覚えさせてくれた。痛いモリは怒り、思わず私の指に噛み付いた…。できることなら、指と指の間のツボに鍼を打つところなんだけど…「やっぱり猫には無理みたいですね」と、モリにはしなかった。けれど、神経麻痺に効くツボとして、尻尾の先端に鍼をうってもらっていた。

 お灸のポイントも教えてもらった。凝りがあるところというか、不調のポイントを見つける目安として。「親指の腹で横にスライドさせるように力をこめ、筋肉を撫でる。ビーズを敷き詰めたようにごりごりしたところがポイント」。モリの場合、以前から、腎臓のあたりが該当するようだった(鍼を打つと痛がる)」

 もし、なんらかのウイルスに感染しての一連の症状だったとして。これでそのウイルスに対する免疫ができたわけだから、二度とモリはこのウイルスには感染しないだろう。
 無邪気な子猫時代がモリにあったかどうかはわからない。保護してからはずっと闘病しどおしだった。回復のスイッチが入ったように思えてから、モリの回復は著しい。なにより、ホメオパシーには、どんなときでも「もう手立てがありません」ということはないのだと改めて思った。患者にも飼い主(保護主)にも「まだすることがある」と、希望を与えてくれる。自然治癒力を発動させるというレメディの力をまた教えてもらった。


 以上、覚書として。未来の自分に向けて。
by amemiyataki | 2008-11-26 14:26 | 日常
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