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どうやったってたかが人間

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小岩井の一本桜 (09年5月16日(土)撮影)



 桜が満開の連休にたどり着けなかったのが少々惜しくも悔しくもあり、改めて目指して行った。とうに桜は散り、こうして青葉繁るる…の一本桜の光景に、新たに菜の花の風景が加わった。これには驚いた。
 10年、いや少なくとも8年前はほとんど無名で知る人ぞ知るという隠れスポットだったはずだ、ここは。「き」さんに教えてもらって初めて知り、その場所に行き、感動した。立ち入り禁止の柵はあっても当時は駐車場もなにもなく…朝の連続テレビ小説「どんど晴れ」、映画「壬生義士伝」ですっかりメジャーになるや、かなり周辺も整備され、立て看板もでき、こうしていつの間にか菜の花までが加わった。景観を守り、大切にするのはいいことだけれど、あまりつくられすぎるのもなあ。なんにもない、だだっ広いところにぽつんと、一抹の寂寞感をまとって立つのが一本桜だよなあ。むしろ、周りは岩手の自然の厳しさを伝えたままでいてほしいかなあ。
 それでも、桜以外の楽しみ方もあるのだと知ったのは収穫だった。

 この場所に行く道を、新たに発見。残雪の岩手山、そこから広がる雄大な稜線に見惚れながら、ほとんど車とすれ違わずに道を駆け抜ける爽快感。好きだなあ。

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 「ぼくの妹」を、気づけば続けて見ている。キャストに特別興味があるわけではなかったけれど(強いて言うなら大滝秀治さん)。脚本(池端俊作さん)がいいのだ。2月に見た「お買い物」の前田司郎さんもすごいなあと思ったが、「ぼくの妹」も、タイトルから連想する「勝気でわがままな妹(長澤まさみ)に振り回されるボク(オダギリジョー)」的なほんわかさがどこにもなく、結末がどう転ぶのか、今からハラハラしている次第。九鬼(千原ジュニア)もせつないよなあ。しかし…なぜ、どうして? 大滝さんの年齢からいって、どう見ても九鬼は息子ではなく孫だろう…と突っ込んでしまった…。地方の優等生から医者になり、大学病院に勤め、優秀ぶりに上司からも妬まれる外科医という設定にオダジョーの髪型と服装に違和感ありあり…という突っ込みも…私だけではないよね?ね? 「いきものがかり」の歌もいい。

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 注文していたHB-101が届いた。以前、勧めてくださったFさん、ありがとうございます。無味無臭なのか、たきは飲み水に入っていることにまったく気づかず。よしよし。

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 日曜の朝日新聞を読んでいたら、久しぶりに稲葉賀恵さんの凛とした姿を紙面に見つけ、つい記事を読み込んだ。「追憶の風景 ガンジス川(インド)」という記事。

 1976年春、稲葉さんが初めてインドを旅したときのこと。「それはパンドラの箱を開けちゃったような体験だった」という。横尾忠則さん、藤原新也さんの本を読み、インドの神秘的なイメージに惹かれて旅を決め、1ヵ月、ニューデリーからカルカッタまで回った。最初は各室に1人ずつボーイがいる高級ホテルに泊まったものの、外に出たとたん、街の光景に稲葉さんは衝撃を受ける。「手足のない人たちが体を引きずるようにして物ごいしたり、果物を売ったりしている」。ところが、片腕の人が器用にパパイヤを切り、それにコショウをかけて差し出すのを恐る恐る食べてみたら…。

 「それがとってもおいしいの!」

 洋服を詰めてきたトランクを送り返し、稲葉さんはTシャツ2枚とスカートとジーンズだけで旅を続ける。高級ホテルから安宿に替えて。ガンジス川の沐浴も経験する。茶色く濁っている川の水も、コップに汲むと濁りがゆっくりと沈殿していく。「それを見て、あー、みんな土に帰るんだと思ったの。」

 雄大なヒマラヤの姿にも圧倒された。人間ってちっぽけな存在だなあと。人それぞれに大きな志があったり希望があったり、喜びも悲しみも背負っている。それは大事なことだけど、どうやったってたかが人間って、思ったの。


 日本の都会で暮らす忙しさ、喧噪とは対極のインドでの経験。70年代後半、「ビギ」「モガ」を立ち上げて猛烈に忙しくなる前にしたインドへの旅。人の生き死にに接し、大自然と対峙するというかけがえのない体験。そうしたことをしっかりと自分のものにし、さらに成長していく。

 「70年代から時代の先端を走り、モデルも務めたオーラは健在。洗練された生き方と作風の基層に、鮮烈な原色のインドが見え隠れした」と締めくくる筆者に共感。かっこいい。

 どうやったってたかが人間。それならせめて命が果てる時まで、じたばたしたっていいやね。
by amemiyataki | 2009-05-18 04:27 | 日常
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