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第4章 はじめての外国語

 サンキュー、ラッキー。私たちは多くの英語を日常会話に使います。はじめて英単語を「しゃべってみた」のはいつだったか、と考えると幼稚園児、いえそれ以前にさかのぼるかも。

 身近すぎると「出会い」の感動も薄いというか、そもそもいつ出会ったかすら覚えていない。「うわ~、外国語だ!」と私がはじめて意識したのは、実はロシア語でした。

 「水はロシア語で、バダーというんだ」。私が小学生のとき、父がぽつりと言いました。私の父は、シベリア抑留者です。極寒の地で生きる苛酷を、父は決してみずから語りませんでした。唯一、楽しそうに語るのが、「どうやってロシア語を覚えたか」。

 ロシアの女性の電話交換手と会話することで、父はロシア語を覚えたそうです。わずかな時間、電話をかけて「今何時ですか?」から始まり、「あなたは日本人?」「そうです」という会話へと発展したとか。

 バダー。この言葉は、幼い私の耳にとても新鮮に響きました。

 大学でロシア文学を専攻したのは、父の影響です。けれど、私が「はじめてムキになって」習得しようとした外国語は、フランス語。「受験英語」になじめなかった(つまり、成績が情けないほど悪かった)私は、第二外国語に選択したフランス語を覚えるのに燃えました。もうほとんど忘れましたが、若いころ何かを身につけようと必死になるのは、大切だと実感します。ちなみに、編集部のFさんはイタリア語に燃えたそう。イラスト担当のこけしちゃんは、ロシア語。

 私に「はじめての外国語」の感動を教えてくれた父も、5年前に亡くなりました。終戦から54年。また8月15日がやってきます。


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by amemiyataki | 2011-04-13 23:28 | 翻訳雑記
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