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第12章 嘘は何色……?

 登場人物の髪や目の色を訳すのによく色名辞典を参照しますが、その度に日本語表現の豊かさに感心したり、あれこれ考えます。

 たとえば「sea green」は「海のような緑色」ですが、これは青みがかかった緑なのか、どれくらい青が入っているのか。海緑色というのは、南方の海のように鮮やかな緑なのか……。また「銀灰色(silver gray)の目が怒りで鋼のような灰色(steel gray)に変わった」など、喜怒哀楽により色が変わるので、意外に神経を使います。

 私が語感や文字面で好きな色に、「はしばみ色(hazel brown)」があります。ハシバミという木の実の色を示すのですが、ヘーゼルナッツ、といえばわかりやすいでしょうか。「うす茶色」とするより、「はしばみ色」と表現するほうが、なぜか温かみを感じます。

 ちなみに「black eye」は「目の周りにできた青あざ」のことで、黒い目のことではありません。「黒曜石(obsidian)のような目」とか「オニキス(onyx)のような漆黒」など鉱物系の表現がありますが、黒い目はどちらかというとエキゾチックな印象で、欧米人の目の色でいちばん濃いのは、「dark brown」のようです。

 それに対して髪の色は「鴉(からす)の濡れ羽色」という表現が英語にもあります(raven-haired)。

 そういえば「ついてもいい嘘、罪のない嘘」を英語では「white lie」といい、反対語の悪質な嘘は「black lie」といいます。白い嘘と黒い嘘。では、真っ赤な嘘は……?

「absolute lie」をはじめとするさまざまな表現はあっても、「red lie」とはいいません。辞書に「a lie with a latchet」とありますが、はてさてlatchet(革製の靴ひも)がついた嘘とは……由来が気になります。


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by amemiyataki | 2011-04-13 23:59 | 翻訳雑記
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